
人事部門に配属されて10年目が過ぎ、さまざまな悩みや相談を受けてきました。
会社の人数は130名の中小企業です。人が集まれば事件が起きるといいますが本当にいろいろなことが起きますね。
今回は社内で起きる(起きてしまう)「イジメ」の相談を受けた経験談と解決策をお話いたします。お役に立てたら嬉しいです。
人事部門は無料相談所
毎日の業務のほかにアポイントなしで管理職の方から「部下が遅刻早退の件で」「長時間労働の是正」について相談したいが時間ある?
社員の方々からは「上司又は同僚との人間関係(イジメ)で悩んでおり会社に来たくない。」など困りごとの相談を受けます。
受付はメールや電話で行う場合が多く、その後の対応は(内容にもよります)対面型で話を伺います。これといって相談のルールがある訳ではないので、時間帯はお互いの都合が合う時間帯に会い、参加者(同席)は内容によりますが、人間関係や勤怠に関する場合は本人と上司が参加したりもします。
具体的な相談内容は以下のようなものです。
- 人間関係がうまくいかない。
- 人事評価基準が曖昧だ。
- 部下の勤怠で改善させたいことがあるが法律に触れないか。
- ダブル不倫を見た。仕事の妨げになるから対処しろ。
- 仕事しないでネットサーフィンばかりしているがどうしたらよいか。
- 部下の健康が気になるがどうすればよいか。
参考までに記載しました。
これから実際にあった事例ですが、何気ない会話から発覚した悩みと解決するまでのお話です。
イジメを受けているAさんの悩み
相談者男性Aさん(社歴26年目、40代)は入社してから商品在庫を管理するこの道26年の大ベテラン。たまたま、私がお昼休憩の時に偶然会ったときにAさんに声をかけたことで「イジメ」を受けている事実が発覚したのでした。
こんな会話から始まりました。

Aさんこんにちは。お久しぶりです。お元気ですか。

元気じゃないよ~。夜も眠れないし最近、会社に来たくないね。本当に!

何かあったんですか?

社内の人間関係で悩んでいるんだ。どうしよう(諦めている感じ)。ある人から半年くらい無視されている。仕事にならないよ。気を使うから仕事でミスもするし。
会社では元気に振る舞っているけど、しんどいから精神科の病院にも行ってきたよ。
病院の先生も驚いていた。「そんな人いるの?」ってね。
実際はもっと感情がたかぶっており、今にも何か物に当たるのではないかと心配するほどでした。そして、一歩間違えば傷害事件やもっと最悪なことが起きるのではないかと想像してしまうほどでした。
この会話のやり取りの後、Aさんから「イジメを受けている」と相談依頼を受けたので直接2人きりで具体的な話しを聞きました。
加害者は人事異動してきた男性Bさん(社歴13年、40代)から以下のようなイジメを受けているとのことでした。
- 話しかけても無視される。
- 名前で呼ばれない。「オイ」、「お前」、「テメイ」と呼ばれる。
- 何気ない仕草で大きな声で叱責される。
- 渡した書類を目の前でクシャクシャにされた。
- 上から目線のメールが来る。例えば「最近挨拶ないな。挨拶しろよ」
Aさんにイジメを受けることとなった原因を聞いたところ思い当たるところがないとの返事でした。
下記の通り、簡単にAさんとBさんの関係をまとめました。
【被害者Aさんと加害者Bさんの関係】
Aさん:社歴26年40代 商品在庫を管理するこの道一筋のベテラン。性格は細かいことは気にしない。
Bさん:社歴13年40代 5年前にAさんの部署に人事異動で赴任。性格はちょっと神経質なところがある。
AさんとBさんの関係から、性格が正反対であり、根本的な考え方を持っていないと仕事の進め方の違いでトラブルが生じてしまうのは必然であると思いました。
現状報告と事実確認のためのヒアリング
Aさんから相談を受けた後、直ちに役員(私の上司)に報告をしました。役員も被害者Aさんと加害者Bさんに話を聞くということになりました。私も事実確認のため同じ部署で働く社員2名とAさんの上司に極秘で聞き取りを行い事実確認を行いました。
[同じ部署で働く2名の意見]
- Aさんに対する暴言は事実(無視や叱責)。
- 毎日のように繰り返されている。
- Aさんに対しての口調が荒い。
- Bさんも上司も現状を変えようとしない。
- 職場の雰囲気も悪く、Bさんの発言で周りを不快にさせるときもある。
[Aさんの上司の意見]
- Bさんは一概に悪くはない。正論を言っている。今まで誰も言えなかったことをBさんは言っているだけ。
- Aさんはみんなで決めたことをせず、自分勝手に仕事を進める。Aさんも悪い。
- Aさんは何回も同じミスをするから、Bさんも口調や態度が変わってくる。別にBさんがイジメをしているとは思わない。
- 被害者Aさんも変わらなければ改善されない。本人に何回も伝えているのに変わらない。
Aさんの上司の発言にもある「正論」をいっているということに対して、次のような質問をしました。「正論を言ってAさんに変化がありましたか」と。帰ってきた答えは「変化なし」。そこで私が言った言葉は「変化がないことを続けるのはやめましょう。なぜならAさんは、何の気付きにもなっていません。ハッキリ言って意味ないです。」
Aさんの上司に、私が「Bさんが同じミスをしないよう工夫したことは何ですか」と質問したら「ミーテイングで注意した」というのです。私は「なぜ?注意が工夫なの?」という思いと、本当に重要なことが抜けていて、改善の余地はまだまだあると感じました。
Bさんの主張
- 私が直接Bさんに事実関係を確認したところ、むしろBさんが被害にあっているような感じをうけました。
BさんはAさんがそんなに悩み、思い詰めていたとは知らなかった様子がうかがえました。
Bさんにヒアリングをして感じたことは、起きてしまった現象に対してただ反応しているだけで、職場を良くしようという思いか少しかけていたのかなと思いました。
ヒアリングを通して見えてきとこと
仕事をする上で、どうしてもミスはつきものであること改めて実感しました。ミスをなくすために意見することは必要でも、攻撃的な言動は不要であるとも思いました。ここから「自分の立場でしか物事を考えない」実態が見えてきたので、「それぞれの立場で考える」習慣が身につけば職場環境が改善されると思いました。
つまり「自分の立場でのみ物事を考えている」よりも「複数の立場で物事を考える」ことができれば現状が改善され、お互いに歩み寄れるのではないかと考えたのです。
そこで、グループごとに「立場」というテーマで話し合い、議論することで、気づきや見えてくるものがある思い学習会を開催するアイディアが浮かびました。
悩んだ末、上司の合意を得て手探りながら次のようなアプローチをしました。
職場改善への具体策の実行
【具体策1 学習会を企画1】
「自分の立場でしか考えない」現状から複数の考え方ができれば問題も解消していくのではということで学習会も企画しました。
テーマ1は「立場を意識する」というものです。ごく平凡な言葉ですが、「相手の立場に立つ」、「その人の立場に立って考える」、「立場と立場の関係性」について意見を述べるというものです。この学習会で得た結論は以下の通りです。
①一つの問題に関して立場が複数あった。
②複数のそれぞれの立場に立ってみる。
③それぞれの立場で行うことを自らやってみる。
「違う立場、特に反対の立場になって考えたらどうなる?」を習慣づけるとなりました。
今後の取組:自分以外の立場で考え行動する習慣を身につける。実践を朝礼で発表する。
【具体策2 学習会を企画2】
「自分の立場でしか考えない」ことで仕事上の感情が全面に出てしまい、ついつい「暴言を言ってしまった」ということがありました。そもそも「仕事の目的は何?」が理解できれば、目的に反する言動は「不要」であり問題が解消していくのではないかと考え学習会第二弾も企画しました。
テーマ2は「仕事の目的はなに?」を考えるというものです。はじめは、生活のため、お金をもらうため、役割だから、などの意見が出ましたが活発な議論の中から以下のような結論に至りました。
①目的は会社の成果に貢献する。
②目的に貢献してこそ成果が生まれる。
③目的から逸脱したマイナス表現は相手を攻撃することになる。
今後の取組:目的は何?を常に自分に問いかけ、成果を出すことを習慣にする。
相手に対しマイナス表現(非難する言動)を使わない。目的・成果をホワイトボードに書き進捗を確認する。
職場改善への振り返り
上司の理解もあり、Aさんに対しBさんが無視をしたり暴言を言ったりということは学習会後すぐになくなりました。検証もヒアリングによって確認いたしました。
ヒアリング対象は同じ部署のメンバーや上司及びAさんです。
ヒアリングの内容は「Bさんの言動がAさんに対し暴言になっていないか」「威圧的ではないか」「無視していないか」「相手の立場に立って行動しているか」「仕事の目的を意識しているか」です。
また、徐々にではありますが雰囲気も改善されてきているように感じますし、実際にAさんから「ありがとう」と言われたことに関しては一定の成果があったと考えております。また、Aさんも長年の仕事のやり方を変えずに行っていることで周りに迷惑をかけていることに気づき反省している様子が伺えました。
まとめ
「社内イジメ」があったら人事部門や上司へ相談しましょう。
- すぐに相談しよう。相談することで気持ちが整理されます。
- イジメは自分本位の考えから発生することを理解する。
- 立場は常に複数あり、周りの人の立場で考える習慣を身につける。
- 「仕事の目的は何だろう?」「求められていることは何?」「貢献って何?」「成果は?」を意識する習慣を身につける。
- 朝礼などを使い常に意識しているかを確認する場をもうける。
- 成果をホワイトボードなど使い見える化する。
【感想】
今回のイジメは何気ない会話から発覚しましたが、ある意味偶然といえるかもしれません。気づかないだけで思い悩んでいる方もいるかもしれません。これは今後の改善事項であると考えます。
読者の皆さんにお願いなのは、イジメの相談は直下型地震のように突然現ることがあります。早期対応が問題解決には早道である経験を通して思いました。決して「自分自身の評価に影響するから」「将来の昇進に影響するから」「個人の問題だからそこまで会社は関わらない」とは思わないでいただきたいと思います。
どうか温かい気持ちで悩んでいる方に寄り添ってください。そして助けてあげてください。これは命を係わる問題です。イジメを受けて悩んでいる方にも大切な家族や友人がいます。決して誰も悲しむことがないようにしてください。
心からのお願いです。私の経験が皆さまのお役に立てたら幸いです。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
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