新入社員研修の課題を改善したら定着率がアップした理由

4月に入社してくる新卒の社員研修は当初、外部に委託しておりましたが、あることがきっかけで自社内で行うようになり、私が担当して早7年が経過しました。企業規模は130人。毎年採用する平均人数は3名~5名くらいです。

新入社員の離職率が50%以上と高く新入社員研修の段階で何か改善できるものはないだろうか模索する日々が続きました。

その教育課題を改善していく中で伝えなければならない重要な項目や、打てば響く素直で理解力が高まる大切な日があることに気づきました。

教育課題を改善していくうちに新入社員の定着率がアップしてきました。そんな試行錯誤を繰り返した経験からわかってきたことを書きました。

私が新入社員研修を担当することになった訳

私が新入社員研修を担当することになったのは社長との会話がキッカケでした。

今までは専門業者に委託し一人10万円もする教育訓練を毎年のように行っておりました。何の疑問も持たず専門のノウハウをもっているから安心だ!というのが理由でした。

しかし、1年以内に辞める離職率が全国平均が32%と言われているなか私か勤務する会社では、50%と高く、2人に1人が辞める異常な状態でした。

辞める新卒社員に理由を聞くと「自分の思いと違った」やりたい事が見つかった」このまま会社にいても自分が活躍できるか不安」という理由が大半だったのです。

新入社員が辞めるということは単純に10万円~20万円もの経費が毎年無駄になります。大企業であれば想定内と言えるでしょうが地方の中小企業にとってはとても大きな損失です。

離職率が高い理由は何か。根本的な原因がどこに問題があるのか探る必要がありました。また、専門業者に研修を委託しても「身だしなみ」「言葉使い」「営業スキル」「スケジュール管理」を学んでもどこか学生気分が抜けなかったり、その後の成長が遅いという部分も見えてきました。

もっと大事なことがあるのではないか?という思いにいたったのですが、この時は、何が大事なのか、はっきりとは理解してませんでした。

それを社長との会話の中で「離職率高いですね。教育に足りないところがある気がするのですが、何が原因でしょうか?」と質問をしたらこんな返事が返ってきたのでした。

社長
社長

離職率が高いのは新入社員に自社の方針や考えを伝えきれないんだと思う。
だから、将来が不安になったり、他にやりたい仕事を探したりしてしまうんじゃないかな?これからは新入社員研修は専門業者に委託しないで社内でやってごらん。できるから。

katsu
katsu

新入社員研修は責任重大ですね。何から手をつけてよいのかわかりませんが一生懸命取り組みます。不安ですがよろしくお願いいたします。

社長
社長

大丈夫、大丈夫。

こんなことがキッカケで新入社員研修を担当することになったのです。当時は本当に不安でいっぱいでした。

新入社員教育の課題を見つける

従来型の新入社員研修では約2週間の教育研修を受けておりました。

しかし、素人の私がプロと同じようにできるわけもなくそして、どうすればよいのか正直わかりませんでした。手がかりとしてアンケート調査を実施することにしました。

その結果から新入社員がどんな気持ちで研修を受けたのか、研修を終えたあとのどんな思いで仕事をしたのかがわかりました。

入社2年目から3年目の社員アンケート調査の結果から、次のような課題が見えてきました。

  • 研修中の内容はわかりやすく、講師の話もユーモアがあり面白かった。
  • 研修を受けても実際の仕事が具体的にイメージができなかった。
  • 実際仕事をすると研修で学んだことよりも仕事から学ぶほうが多かった。
  • 研修が終り配属後はすぐ営業の実践だったので、わからないことが多く苦しかった。
  • 配属1か月後には営業目標の達成を求めたれた。
  • 会社全体の部署の役割や業務内容や関連性を知りたかった。

まとめると以上のことがわかりました。

アンケート調査から新入社員研修の概要が見えてきた

アンケート調査を終え私が所属する課内でミーティングを開き、どのような新入社員研修のカリキュラムを組めば効果的なのか話し合いました。

<話し合いで出た疑問点>↓

  1. 従来の新入社員研修での改善点は何。
  2. どのような社員に育てたいのか、教える立場にある者達が「何をしようとしているのか?ねらいは?」が明確か。ここが曖昧だと場当たり的になって新入社員に伝わらない。そこが共有出来たら今度はどのようにやるか?
  3. 改善されれば離職理由は解消されるか?

<話し合いで出た結論>↓

  1. そもそも大事なとことが抜けていた。マナー基礎研修の割合が高く、最も大事な基礎の基礎、仕事を進めるうえでの根本的な考え方を伝えていなかった。研修では根本的な考え方を伝る。(根本的な考え方は後述してます)
  2. 学生気分の脱却と仕事において成果を出せる社員にする。そのねらいは、日常業務に追われて何も意識されないまま、惰性で仕事をすることのないようにする。「何のためにやるか?」「何をめざすか?」の思考を習慣化させる。
  3. 上記を取り組めば「自分の思いと違った」「やりたい事が見つかった」「このまま会社にいても自分が活躍できるか不安」という離職理由も解消されるはず。

カリキュラムの作成

外部に研修をお願いすると、期間は約2週間でしたが、アンケート結果を踏まえると企業規模によっても異なりますが、基礎研修からはじめ、各部署で実習し、メーカーやお取引先での研修を含めると期間は最低でも1か月必要なことがわかりました。

カリキュラムの概要

  1. 事前準備として教育方針を作成する。(これは、研修担当者が社長の思いをくんでどのような研修や社員にしたいか明確であればOKです)
  2. 社長又は役員から新入社員に対して研修の目的や思いを明確に伝える。
  3. 研修の目的にあった研修資料で(私はパワーポイントで作成しました。)教育する。
  4. 会社の各部署を1週間単位で研修し業務概要を学び自分のことを知ってもらう。
  5. メーカや取引先に半日程度でよいので商材やノウハウの研修をお願いする。(無料でやっていただけるか交渉してみてください)

新入社員研修で何を一番に伝えると変化が現れるか

入社してくる新入社員は、明るい豊かな人生を夢見て大きな期待と少しの不安を抱えいます。

今まで新入社員と接してきて言えることは、研修担当者が伝えるべきことを明確に伝えないと、不安を抱えてしまう傾向があり入社1年から2年くらいで辞める確率が高くなります。

では何を一番明確に伝えたら良いのでしょうか?それはこの2点、「1.社会が企業に求めていることは何?」2.コミュニケーションって何?」をハッキリ明確に伝えることが重要です。これは、誰も声にだしては言ってくれませんし教科書に載っているものでもありません。

これを理解すると、新入社員は一歩一歩前進しようする心ができ、主体的に努力する姿勢が芽生え一気に変化が生じると感じます。

この上記2点はどのような経緯でこの導き出されたのか

「1.社会が企業に求めていることは何?」は社内勉強会で出てきた答えです。企業は社会経済の中でしか生きることができません。ということは最低守らなければならないのは何か?を考えたときにシンプルに出てきた答えです。

2.コミュニケーションって何?」は、ビジネス界にもっとも影響力をもつ思想家として知られる、P.F.ドラッカーが言われました。

1.社会が企業に求めていることは何?

社会が企業に求めていることは次の3点にまとめることができます。これはどの企業も同じことが言えると思います。要は社会がよくなるために頑張ろうということです。

【社会の要望】

社会を知るうえでとでも重要です。入社して間もないと、あまり真剣になれない部分ですが、ここをしっかり取り組んでいる会社は「強い」、「強くなる」ということを覚えてもらいます。

①経費の無駄使いしない。
これはどこの企業でも取り組んでいるいると思います。無駄な経費が減れば利益が多く生み出せることができますし、「経費の無駄使いしない」を意識することは限りある資源を大切に使うことであり、目に見えませんが企業も、間接的に社会に貢献していることを理解してもらいます。

すると、世の中のためになっている良い活動が、新入社員にも「無駄」はよくない事という意識が芽生えさらに自分たちも貢献しようという気持ちが生まれます。結果、離職の防止になりました。

②利益を出そう。
社会は「経費の無駄を無くして利益をちゃんと出してくださいよ」と言っており、これは利益が出て初めてお給料やボーナスがもらえることを理解してもらいます。要は売上が高くても利益が少なければその分、使えるお金が少ないので活動範囲が狭くなります。

売り上げから経費削減の努力をして利益を上げる。そうしてこそ社会に貢献出来るのだということを理解すると、利益を意識して働くようになり、目的意識の強化にもつながり結果、離職の防止になりました。

③貢献しよう。
社会は「利益が出たらその一部を社会が良くなるように使ってください」と言っており、これは、社会経済活動から得たお金を別な形で還元してくださいネ。という無言のメッセージを理解してもらいます。

例えば、企業は社会が住みやすくなるために存在しているのだということを伝えます。たとえば、地球環境が良くなるように木の苗を植えたり、地域の清掃活動があたります。

新入社員には常に貢献とは何か、その結果どのような成果が期待できるのかを考えてもらい、そうすることで、目的意識の強化にもつながり結果、離職の防止になりました。


2.コミュニケーションって何?

新入社員はコミュニケーションをどう理解しているだろうか?と不安に思うことがありました。例えば、仕事を覚えてほしくて教えているのに「出来ません」「時間がありません」と否定的だったりまた、変にご機嫌をとったりと違和感がありました。

そこで、一言でいうとコミュニケーションって何だろう?と質問すると以下のような返答があります。

仲良くする、挨拶をする、相手の話を真剣に聞く、積極的に話しかける、相手を思いやる気持ち、空気を読む、間合を図る等々。

しかし、関係のない話を真剣に聞くでしょうか?通りすがりの知らない人に挨拶や話しかけるでしょうか?どんな人でも思いやれるでしょうか?など矛盾が生じてしまいます。

このままコミュニケーションの認識がズレたままだと、思いの伝達が一方通行になってしまい退職につながるの原因ではないかと不安でした。

そこで私も自分なりに考え、本も参考にしました。そこで私の考えとぴったりはまったのが、P.F.ドラッカーさんが言った言葉です。それは、コミュニケーションとは「期待と要求」である、というものです。

「期待と要求」をわかりやすくすると、相手が「何を期待し、どうありたいのか」を観察し言葉や態度で示すこと、という結論に至りました。

コミュニケーションを新入社員に上記のように説明しましたら、毎年のように何か気づきを得ているようで相手の話を真剣に聴く姿勢が見て取れました。

上記の伝えるべき2点を研修で伝えた結果、離職率が50%から13%に激減したのでした。そして、この2点を理解したうえでマナー研修やスキル研修を実施すると新入社員も意識して取り組むようになると思います。

教育期間の中で一番大事な日は最初の2日です。

新入社員に研修で最初に伝えるべき大事な日は最初の2日間であると経験から学びました。なぜなら本人たちは最も緊張している日でありすべてがまっ白の画用紙のようだからだと思うのです。
私自身も最初の日は今でもハッキリ覚えておりますし、この2日間に大事な企画を持ってくると素直に理解してくれます。

3日目以降になると緊張も徐々に慣れてきてくるものです。しかし、「1.社会が企業に求めていることは何?」「2.コミュニケーションって何」が理解できていると真剣さを保とうとする気持ちが伝ってきて、私自身もやりがいを感じる瞬間でもあります。

まとめ

  • 新入社員研修の「課題」を明確にして改善する。
  • マナー研修よりも大事なことそれは、「社会が企業に求めていることは何?」「コミュニケーションって何?」を明確に伝える。
  • カリキュラムをつくる。
  • 研修でする上で一番大事な日を逃さない。

新入社員研修を企画するにあたり大変な時期もありましたが、何とか成果につながるものをつくることが出来るようになりました。社内で教育される方向けに参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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